合意なきEU離脱に備えた文書公開『ロンドン・コーリング/Nomad Lifeを生きる』

合意のないまま離脱を迎えるという、いわゆるHard Brexit の「万が一の事態」に備えるための文書の一部が公開された。

EUとの貿易に関税がかけられれば、英経済は大きな打撃を受ける。

金融サービスではカード支払いのコストが増すことが予想される。

EU枠内企業はロンドンの銀行への投資を敬遠するだろうし、医薬品の不足なども懸念されている。問題は山積みだ。タイムリミットが刻々と迫っている。そこで政府は合意がなかった場合に備えて、だんだん国民の心の準備を促しているようだ。もちろんEUに対して大きなメッセージが含められている。万が一の場合ですよ、と言っているが、だんだんこれが既成事実化していくのではないかな、と私は懸念している。

何年か前に日本の著名ヴァイオリニストのヴァイオリンがドイツの税関で無申告不法持ち入れの疑いをかけられ、関税と輸入付加価値税の支払いを要求され、楽器を押収されるという大変な出来事があったのを覚えているだろうか?

この事件後、私の周りの日本人弦楽器奏者はドイツを経由しないで動く方法を取ったり、どうしても仕事でドイツに行く場合などは、自分の楽器が自分のものであることを証明する正式な書類を準備し(かなり煩雑な作業だったと聞いている)常にその証明書を持参していた。(多分現在も)今後EU離脱後、英国のミュージシャン達もこの日本人ミュージシャンと同じような経験をすることが考えられる。ところが、周りの人と話していると、ハラハラしているのは私だけ?みたいに感じることが多い。食料品もこれだけEUからの輸入品に頼っているのに、関税がかかってこれ以上高くなったら目も当てられないではないか。ただでさえロンドンの物価高は問題なのに。

もちろん私がいくらハラハラしても事態は変わらない。

「万が一に備えて」は本来の合意路線からの逸脱に繋がるのではないか、と心配だ。

そして結局何が起ころうと困らないお金持ち政治家に操られている国民はどこの国も同じか?と思うと悲しい無力感に襲われる。

 

身の回りのEU食品 Photo by Sanorui&NK

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