音楽家の練習場所『ロンドン・コーリング/Nomad Lifeを生きる』

楽家が抱える深刻な事情。それは練習時の音出し問題。防音の音楽室を自宅に完備している音楽家は少数派だろうから、音を出す「ご近所迷惑な」ミュージシャンは、苦労して練習の時間帯や練習場所の工面に悩む。私もその一人だ。

現在ロンドンでの自宅練習については隣人の理解もあり恵まれている方だと思うが、それでも音を出す時間には気をつけるし最高で2~3時間程度しか練習しないようにしている。

しかしながら2~3時間の練習では十分ではないので、練習スタジオを借りて練習に行く。大学で教えていた時は自分のオフィスでいくらでもいつでも練習することは可能ではあったが、1つ大きな問題があった。プライバシーがないことである。学生も同僚も私の部屋の前を通りがかれば、私が何をどうのように練習しているか聴こえる。

練習は演奏ではない。演奏へ向けての練習なのだから、自分の弱みを全てさらけ出している。それを公にするのにはかなりの抵抗があった。

その時は、人生初めて電子ピアノを購入して自宅でヘッドフォンで練習したりもした。

今は、弱みをさらけ出しても、まぁ問題ないかな?と言う環境なので、ご近所には申し訳ないが生ピアノで音を出し練習し、足りない分は昔から通っているリハーサル室に通う。

このリハーサル室は、ロンドンの中心部ホルボーン駅から歩いて8分ほどのところ。1800年代初期の建物の1階。趣味で音楽をやっている歴史研究家のF氏のご自宅なのだ。彼は紹介のあった人だけにとても良心的な値段でリハーサル室を貸し出している。他の商業ベースのスタジオと違い、他の部屋で誰かが練習している訳でもなく至ってプライヴェートな環境で誰からも邪魔されずに練習が出来る貴重なところ。

F氏のようなパトロン的メンタリティを持っている人は本当に数少ない。

楽家の味方に感謝!

 

Photo by Sanorui&NK  リハーサル室近くの高級紳士服店のウィンドウ

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